……。   おお、起動したか!   ……初期起動、成功シマシタ。 異常ハ見ラレマセン。   わたしが見えるか、お前の生みの親だぞ。 お前を作った科学者、「ゼクター」だ。   ……ぜ、くたー。 ……ワタシをつくったハカセ、ぜくたーハカセ。   よしよし、言語中枢も正常だな。 良いか、お前には名前を与えてやる。 これからお前はこう名乗れ。     "PSTシリーズ"の1号機。 PST-001、コードネームは『Persecutor』。 名前は『パース』だ!       ―パース。 それがワタシの名前。 戦闘汎用型のロボットで、大量生産されたの1つ。 ハカセによってつくられた……。     ………1つの命。       〜 Story of "PST-001" 〜       「…ハカセ」 「どうした、パース」 「ヒトは、何を思い、互いをキズつけあっているのでしょう?」 「…分からない」 「そこにメイヨがあるからですか? そこに富があるからデスか?」 「……分からないんだ」 「…デハ、何故ハカセはワタシを作り出したのですか?」 「………守って欲しいんだ」 「この研究所を守って欲しいんだ」 「…マモ、る…」 「……ワカりマシた。 ワタシはこの研究所ヲ守りマス」 「ワタシにもヨウヤク、『タタカウ』とは何かが分カッテきたカモシレマセン!」       「ハカセ、もうココはキケンです。 ハカセは逃げてクダサイ」 「いや…、君ばかりにも迷惑はかけられないんでね」 「!? 何を…」 「さぁ来い政府ども!! 狂気の科学者ゼクターはここに居るぞ!!!」 「居たぞ!! 捕まえろ!!」 「…ッ!」 「! パース、そこを退くんだ」 「イヤ…デス!!」 「…そ、それは……」 「高圧縮の電気が詰められた、私特製の電管……」 「ハカセとこの研究所ヲお守りスルくらいナラ、ワタシ1体のギセイで済ムことジャナイですか?」 「バカな事を…言うなあああぁぁ!!」 「!! ハカセ!! 電管をオ返シクダサイ!!」 「大丈夫だパース、この電管はスイッチを押すだけで周囲に高圧電流が走る仕組みだ」 「私もろとも政府を焼きクズにしてしまうから、安心しなさい」 「ソンナ…」 「パースとか言ったな、そのロボットは動けぬように捕まえておけ!!」 「離セ!! 離セ!!!」 「…パースに手を出すな、三下共がああぁ!!」 「ハカセ、ヤメテ下さい!!!」     ―カチッ     「ぐあああああああああああああああああああ!!!!!」 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 「ハカセええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!」         「……」 「終わったか、よし、来いロボット」 「………ヨクモ」 「あ?」 「………ヨクモ、『ボク』の生みのオヤを」 「知るかよ、あいつが勝手にやった事だ」 「ウルサイ!! ハカセは僕のコトを心配してくれていたんだ!!」 「そんな事も知らないオマエらに、ハカセの優シサなんて…」 「―!?」 「分かるもんかあああああああああああああああああああああああああ!!!!!」 「う、うわああああああああああああああああああああああああ!!!!」             ……もう、アルケない。 研究ジョも壊れタし、ハカセもいつの間にかいなくなってしまった。 セイフの連中ハみんなくたばったみたいダケド…。   「……はは、少し暴れすぎたかな」 「……ねえ、ハカセ」 「…僕はハカセを守るために生まれてきたんだよね」 「だったら何で……」   「僕は大切な人を失ってしまったんだろう………」       「なーんだお前、随分とボッロボロじゃねぇか」 「……ダレ、だ」 「俺様はスファリエル。 カオスワールドを創造した天使だからな!!」 「…ああ、ハカセ。 僕もとうとう天に召される時が来たヨウです」 「それは別の天使の仕事だからな」 「そんなことより、立てるか?」 「………」 「無理か…、まあ仕方ないよな。 その傷じゃあ、相当闘(や)りあったみたいだが」 「……ハカセは政府に狙われていてね」 「研究所を守るために僕を開発した」 「僕とハカセはいつも仲良しだった」 「辛い時でも楽しい時でも一緒だった」 「でも、博士は政府の連中を道連れにして…」 「……ああもう、まだるっこしいからな!」 「その、お前のハカセについては残念だったな…」 「…でも、安心すると良いからな!」 「……何を」       「ウチに来いよ、そのきったねぇボディを直してやるからな」                   ………。   パース、どうしたそんな顔をして。   ゼ、ゼクターハカセ!? どうしてこんな所に……。   いやはや、逝っちまう前にお前の顔を一目見ようと思ってな。 しっかしお前も随分喋るのが上手くなったじゃないか? 学習型人工AIチップを付けておいて正解だったか。   ゼクターハカセ!! あの後必死になって探したのニ、何処へ行っていたんですか…。 ……って、「逝っちまう前」?   何だお前、何も覚えてねーのか。 お前は死にかけた俺を病院まで運んで行ったじゃねーか? とはいえ、あんな電流を浴びちまえばしばらく経てば死んじまうよな。   …ボクがハカセを? ……でも、何で? 無意識のうちに活動することなんて。   あるんだなそれが。 成長して、『心』を持つロボットに見られる『欠陥』のようなものがな。 まあ、それはいつになっても直らないけどな。   心…、欠陥……。   分かってくれなくてもいいさ。 そろそろ時間だからな、俺はこの辺でさよならしなきゃいけねえんだ。   え…。 そんな、待って下さいよ! ボクは博士を守るって決めたのに、何で博士が先に旅立たなくてはいけないんですか!!   …バーカ。 子に守られる親ほど、身勝手で見苦しいものなんざねーんだよ。 俺はお前の『親』だぞ、自分の『子』を守って何が悪いというんだ? っと、一番初めに言った言葉とは大分矛盾しちまったが、まあそういうことだ。 じゃあな、パース。   ハカセ――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!!!!!               ………。   お、やっと目覚ましたか。 おーい、俺が見えるか?   ……何とか。   そうか、再起動っつーのはやたら負担がかかると聞いたが、これほどまでだとはな。   …すぐよくなるよ。   お前が言うんだから平気そうだな。 えーと、そういや名前聞いてなかったな。 名前、なんて言うんだ?   …PSTシリーズ1号機、戦闘汎用型ロボット。 コードネーム『Persecutor』。         ―名前は『パース』。               fin.